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美しい文章って素晴らしい。

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ちょうど1年前、三鷹の跨道橋を訪れました。

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ここは太宰治のお気に入りの跨線橋で、見晴らしのいい場所として友人たちを案内していた場所です。

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昭和4年から94年。老朽化のため、昨年12月10日をもって、その役割を終えました。
富士山も見える。
太宰が誇らしげに案内する様子が、なんだか想像できます。


捉えようによってはなんのことはない普通のことも、書く人が書けば、美しく、胸に響く文章となります。
鉛筆1本で、ここまで世界を広げてくれるとは、本というのはなんと素晴らしいことかと、今日、宮沢賢治がお好きなお客様と話していました。


『斜陽』の冒頭に関しては、ブログでも何度か触れてきました。
初めて読んだとき、なんとも言えぬ気持ちになりました。見たこともない、見るはずのない、その光景が見えたからです。この瞬間、時計の針のスピードが、落ちたような気さえするのでした。


朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、
「あ」
 と幽かすかな叫び声をお挙げになった。
「髪の毛?」
 スウプに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。
「いいえ」
 お母さまは、何事も無かったように、またひらりと一さじ、スウプをお口に流し込み、すましてお顔を横に向け、お勝手の窓の、満開の山桜に視線を送り、そうしてお顔を横に向けたまま、またひらりと一さじ、スウプを小さなお唇のあいだに滑り込ませた。ヒラリ、という形容は、お母さまの場合、決して誇張では無い。婦人雑誌などに出ているお食事のいただき方などとは、てんでまるで、違っていらっしゃる。

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青森県五所川原にある、太宰のお母様の部屋には、「斜陽」の文字が。

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「太宰は暗いから好きじゃない」とよく聞きます。でも、本当に暗かったのでしょうか。
私はそうは思いません。
確かに孤独はあったと思いますが。

死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。
お年玉としてである。着物の布地は麻であった。
鼠色のこまかい縞目(しまめ)が織りこめられていた。
これは夏に着る着物であろう。
夏まで生きていようと思った。


寺山修司の『ポケットに名言を』に綴られた、太宰の文章。

生への執着を感じます。太宰は生きたかった。生きる理由を探していたのだと、私は思います。


そして、こちらも以前ご紹介したのですが、

 わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
 またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。

 わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。

 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらつてきたのです。

 ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つたりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです。

 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。

 けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。


大正十二年十二月二十日
               宮沢賢治


宮沢賢治『注文の多い料理店』序 より

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僕はもうあのさそりのように、ほんとうにみんなの幸のためならば、僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。

『銀河鉄道の夜』より

いえ、こんなところに書いたところで、興味のある人とそうでない人がいることはわかっているのです。
でもそんなことは当たり前で、でも今日、お客様と、『注文の多い料理店』序の話をしていて、ああ、こうやってもう何年も昔の人の文章で、こうして生まれた場所も、育った環境も違う人同士が、感銘をうけたことを確認しあい、感動するということがあるのだと、とても嬉しくなりました。
熱心な仏教徒であった宮沢賢治、痛みを知っての優しさなのか、こんなにも美しい文章を世に残してくれた。こういう文章は、日本の財産です。
 
 
 
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