宮沢賢治「注文の多い料理店」序
- 2023/09/28
- 23:30

昨年、岩手県盛岡市を訪れた目的は、『光原社』でした。

盛岡は宮沢賢治が長く住んでいた場所です。

民芸品店である光原社。
もともとは、創業者である及川氏が、盛岡高等農林学校時代の友人、近森氏と協同で、農薬関連の書籍を出版していましたが、二人の学生時代の先輩が教師をしている、花巻農学校を訪れた際、先輩から童話の原稿を見せられ、熱く語られます。
2人は、物語の内容もよく読まずに、童話集を出版しよう、と決めたそうです。

これが宮沢賢治の「注文の多い料理店」
この光原社という社名も、宮沢賢治によってつけられました。
「注文の多い料理店」は、実際には”注文が少ない本”だったそうですが、及川氏はいーはとーぶ、農民の理想郷の夢をのせ、満足していたそうです。

「雨ニモマケズ」

この「注文の多い料理店」の”序”を、私は今まで読んだことがありませんでした。
でも、あまりにも美しい文章なので、もしまだ読んだことがないという方がいらっしゃれば、是非ご紹介したくて。

わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。
わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらつてきたのです。
ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つたりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです。
ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。
大正十二年十二月二十日
宮沢賢治
財や知恵がなくても、私たち1人ひとりの日常の中に、、、無限の光や、通り過ぎる風の香りの中に、幸せがあります。
宮沢賢治らしい優しい文章。感動します
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