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利休と秀吉と朝顔

昨日、お茶会を終え、今日は伯父を横浜の自宅まで送ってきました。

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伯父の自宅の露地

送迎も、正直楽ではないかもしれないけれど、乗っている方も近くはないのだから、大変だと思います。
そこまでしても伯父に来てもらいたい訳は、お話にあります。

ここ数年、美しいと思うものが変わってきたように思うのですが、その理由の1つは、伯父から教えてもらったことだと言えます。
お話を聞くと、美しさの基準がかわる。日常「美しい」と思う回数が増えれば増えるほど、必然的に幸せも増えるはずです。


私はお茶会の間、基本裏方なので、ずっとお席にいられたわけではなかったのですが、豊臣秀吉と千利休の朝顔の話が聞こえてきました。

あるとき秀吉は、利休の屋敷の露地に、朝顔が咲き乱れていると耳にします。利休に席を設けるよう伝え、当日利休の屋敷を訪れた秀吉でしたが、朝顔が見当たりません。しかし茶室に入ると、床には見事な朝顔が一輪。
秀吉が感心したという逸話が残っています。


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また、今回聞いた話ではありませんが、印象深いものとして

「心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫(しぎ)立つ沢の 秋の夕暮れ」

(世を捨て出家したこの身のはずなのに、秋の夕暮れにはやはり情緒を感じてしまう。シギが飛び立つと、その羽音が轟いた後だからこそ、より一層、静けさが際立つのだ。)

静寂とは、必ずしも無音の状態をさすのではなく、静寂を破るように鳥の飛び立つ音があたりに轟いたからこそ、より一層その後に静けさを感じるのだ、という歌もありました。

そのように、自分の中で疑問にも思っていなかったようなことを、今までにいくつも教えてくれました。
そのことで私も、考える癖がついた部分があります。

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今回、店内に南天を飾っていたのですが、掃いても掃いても花が床に落ちてくるのです。

花なのだから、落ちるのは当然、その姿にこそ風情があるのではないか、、、いや、そういうものではない。お客様をお出迎えするのだから綺麗にしておくべきだ、、、と、たかだかといってしまえばそれまでなのですが、そんなやりとりがありました。
この問題におそらく正解はありません。結果的に伯父が「このままがいいと思う」と言ったことで決着がつきました笑。

帰ってきて、利休のことを調べていたら、こんな逸話がありました。

あるとき利休は朝茶に招かれ、知人のいる茶室を訪れます。
しかし露地は昨夜の風で椋の葉が散り、山中の様なありさま。利休は、「これは面白い。風情がある。けれど今日の亭主は巧者ではないから、落ち葉を掃き捨ててしまうでしょう」。

その言葉どおり、中立(なかだち)のときに、綺麗にされてしまったという話。そして利休はこうも述べました。

「露地の掃除は、朝の客であれば前の晩に、昼の客なら朝に行うもの。それ以後はたとえ落ち葉が積もっても、そのままにして掃かないのが巧者というものです」


足りないものを、想像で補う。見立てる。
そういったことが、今はとてもおもしろく感じます。

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今回のお茶会も、森を意識した空間にしたことを、はじめは緑が素敵と言ってくれていた参加者の方々も、私が

『夏山の 影をしげみや 玉ほこの 道行き人も 立ちどまるらむ』
(夏山の樹々が青々と茂っている。その木陰に、道行く人も立ち止まるだろう)

という歌になぞらえて、皆様には森の木陰で休憩をとっていただきたいと説明させていただいたところ、「ああ!」との声があがりました。
本当の森ではなくとも、みなさんが森に身をおいてくださった瞬間で、そういった美を共有できたことを嬉しく思いました。
 
 
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