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花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。

お客様が帰られるとき、月が綺麗とおっしゃって、見あげると満月に少し満たない、綺麗な月がお店の上に出ていました。

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1ヶ月くらい前、やはり見上げた月を、近くにあったオリオン座とともに撮りました。
その夜、吉田兼好の徒然草の一節に、何百年も昔、同じ様に空を見上げたのだろうかと想いを馳せ、時代は違えども、「美しさ」を感じとる心は一緒だなぁと思いました。



花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。

花は満開のときだけを、月は雲ひとつかかっていないものだけを見るものであろうか。(いやそうではない)


雨に向かひて月を恋ひ、垂れ込めて春の行方知らぬも、なほあはれに情け深し。
 
降っている雨に向かって(見えない)月を恋しく思い、簾を垂らした部屋に籠もり、春が過ぎてゆくのを知らずにいるのも、しみじみとして趣が深い。


咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ。

今にも花開きそうな桜の梢や、花びらが散った庭なども、見どころが多い。

歌の詞書にも
『花見にまかれりけるに、早く散り過ぎにければ。』
とも、
『さはることありて、まからで』
なども書けるは、


歌の詞書(ことばがき)も
「花見に出かけたところ、すでに花が散ってしまっていた」とか、「用があって花見に行けなかった」などと書いてあるのは


「花を見て。」
と言へるに劣れることかは。


「花を見て」と言う詞書に続いて、華麗な桜を詠んだ歌に劣っているのだろうか。(いや、そうとはいえない)


花の散り、月の傾くを慕ふならひはさることなれど、ことにかたくななる人ぞ、
「この枝、かの枝、散りにけり。今は見どころなし。」
などは言ふめる。  
よろづのことも、初め終はりこそをかしけれ。



花が散り、月が沈もうとしていくのを惜しむのは、もっともなことではあるが、特に情趣を理解しない人は、
「この枝も、あの枝も散ってしまった。今は(もう)見る価値がない。」
などと言うようである。
どんなことも、初めと終わりこそ、趣が深いものである。



現代で言うならば、もしかしたらいわゆる「SNS映え」には、ちょっと物足りないのかもしれません。
しかし、心に響くものはすべて「最盛」とは限らず、「不足の美」と言ったらいいのか、満月でないからこそ、雪が降っているからこそ、すでに散った桜の枝だからこそ、感じ取れるものというのはあるはずです。

モノの完璧さ以上に、どんなものからも感じ取れる、心の豊かさは失いたくないものです。


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そういえば、私は華道を習ったことはありませんが、母が生けた花を見ていると、必ず蕾を使っているので、私もお花を選ぶときに、いつからか真似するようになりました。

つぼみは「これから」を意識させます。それは「希望」ともとれます。徐々にその蕾が膨らんできて、まだかまだかと思っているうちに、ある日気づくと咲いている。でも、そこから徐々にしおれてゆく。

これもまた、花を開いているときだけが美しいのかというと、そうではありません。
花が移ろいゆく姿を見届けるというのもまた、日本らしい美学と言えるのではないでしょうか。
 
 
 
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