fc2ブログ

記事一覧

スムーズな日常会話には妨げとなる読解

私たちは人と話すときに、相手の話から何か言葉が抜け落ちていることや、言い間違い、ちょっとした語彙の選択ミスはさほど気にしないように発達しました。

いちいち「それはこういうことですか?」と確認すると話が進まないどころか、相手の話の腰を折り、せっかく気持ちよく話してくれているのに、リズムを崩して不愉快な想いをさせてしまうことにもなりかねないからです。


たとえ引っかかることがあっても、おそらくこういうことだろうと変換、解釈する癖が、大きなかぶやスイミーを読んだ頃から現在に至るまでの間、無意識に培われてきました。そして大人になった私達は、そうした機能を備えたことに、一切の疑問を持つこともありません。
それは人間のとても優れた点であると言えるでしょう。


しかしながらその「便利な機能」は、話の内容を効率よく知るためには利点であるものの、果たして人間らしい「奥行き」を知るためにはどうでしょうか?


いきなりなんの話をしているのかと言うと、つい最近お友達に、最近面白いと思ったことは何かと問うたところ、「まずはこの文章を読んで」とスマホを手渡されました。

読み始めると、見覚えのある、正確には聞き覚えのあるショートストーリーが載っていました。


「これは又吉直樹の。。。?」
というと、とても驚いて「これを面白いと思って人に話したんだけど伝わらなくて」と言いました。
まぁなんか、わかる気がします笑。


私は芸人であり作家でもある又吉直樹さんのYouTube、「渦(うず)」が好きです。それは今年1月にブログにも記しています。


1~2分もあれば読めるショートストーリーを「インスタントフィクション」とし、はじめにサラっと読んだ後、又吉直樹さんがじっくり一文いちぶん自分の解釈を説明していくものなんだけれども、それらは私たちが大人になる上で知らず知らずのうちに身につけてしまった変換や効率とは真逆の行為であり、それがとても興味深いのです。


普通ならスルーしてしまうような部分も深く掘り、ここでこういう表現をするということは、実はこうであると言える、と、想像を巡らせて語ってくれます。


たとえば、、、「信念の犯行」というインスタントフィクション。

「おい強盗だ。てめえら動くな。動くなよ。
いいか?少しでも動いたらこの拳銃が『バーン』だからな?本物だぜ?」

という文から始まるのですが、そこに線を引き、どうやら周りの人がどうじていないと語ります。

fc2blog_20210614183949a4a.jpg

又吉さんは続けます。拳銃が本物かどうか、そもそも怪しい。周りはその拳銃の価値を認めていないのだ。たとえばこの表現者がお笑い芸人だとしたら、この拳銃とは笑いをさすことになるし、ラッパーならラップということになる。


といったぐあいに。普通なら、ご丁寧に「強盗」だと言っているのだから、文字通り読み流しそうなところに疑問を持つことで、可能性が広がります。そのように読み進めていくことで、文章全体に実は奥行きがあることを知ることとなるのです。なんと面白い。

fc2blog_20210614185545774.jpg

私はそのお友達に、又吉直樹さんの東京百景という本、好きかも知れないと勧めました。
長編小説と違い、一つひとつのお話が見開き2ページほどで終わってしまうため、物理的にもとても読みやすい本で、日常を描いているだけなのに、その文体がとても潔いというか、小気味よいのです。


誰にでも興味の湧くこと、湧かないことがあるのは当然のことで、どんなに熱く語られても「ふうん」以上の感情が湧かないこともあります。だからこそ様々な文化や表現が成り立つのだから、これは仕方のないことなのですが、この話題で盛り上がれたのは私も初めてで、嬉しかったです。どなたか「渦」を観ているという方がいたら、今度それについてお話ししましょう笑。

 
 
お洋服と和のうつわと珈琲豆のお店
Riyon
 
 
埼玉県熊谷市別府5-80-3  
TEL : 048-533-9533
営業時間 :11時~18時
おやすみ:日/月曜/祝日
 
 
 
にほんブログ村 地域生活(街) 関東ブログ 熊谷情報へ
にほんブログ村

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

プロフィール

Riyon

Author:Riyon
埼玉県熊谷市。籠原駅から徒歩15分ほど、公園のめぐりにある、珈琲豆と器とお洋服の、小さな小さなセレクトショップ、Riyonです。
Open 11:00~18:00 日/月曜/祝日はおやすみです。  

記事カテゴリ【月別】